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大阪地方裁判所 昭和39年(行ウ)48号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕旧都市計画法一八条一項は、「前二条の規定による収用又は使用に関しては本法に別段の定ある場合を除くの外土地収用法を適用す。」と規定しているので、旧都市計画法一六条による収用について、旧土地収用法二九条の適用があると解すべきか否かについて検討する。まず、旧土地収用法二九条(「起業者が第二六条第一項の規定による事業の認定の告示があつた日から三年以内に第三一条の規定による土地細目の公告の申請をしないときは、事業の認定は、期間満了の日翌日のから将来に向つて、その効力を失う。」)の立法趣旨は、事業の認定により起業者は収用権を取得するものであり、その反面起業地の区域内の土地所有者等に対しその所有権等が将来収用されることもあり得る不安定な状態を招来するので、起業者が事業の実施に至るまで長年月を要しないのが一般であるにもかかわらず、この不安定な状態をあまり長く放置するのは適当でないと解される。一方、旧都市計画法一九条の規定によつて、道路等の施設に関し旧土地収用法二〇条の事業の認定とみなされる旧都市計画法三条の都市計画事業決定は、都市全体に対し総合的な一定の計画すなわち都市計画(同法一条)を公定すると同時にこの広汎な計画を実現するため将来実施すべき道路その他の施設に関する事業計画を具体的に決定するものであるから、土地収用法の事業の実施の場合とは異なり、前者の事業の実施には都市計画全般とも関連して相当長年月を要することを予定しているというべきである。そうすると、都市計画事業決定が土地所有権の一定の制限をもたらす効果(旧都市計画法一一条、同法施行令一一条、同法一〇条、建築基準法四四条二項等)を有するにしても、旧土地収用法二九条を前者について適用するならば、長年月を要することが予定される都市計画事業は目的を達成することができなくなるであろう。してみると、同条の前示立法趣旨に照らして同条は都市計画事業決定に適すべきではないと解すべきである。

次に、旧都市計画法一九条の規定が、都市計画事業の認可をもつて旧土地収用法二〇条の事業の認定と看做しているのは、前者の事業の認可があれば、重ねて後者の事業の認定を受けることを要せずしてこれと同一の法律効果、すなわち収用権を生ずるものとする趣旨であつて、事業の認定が存在するものと看做すものではない。すると後者の存在を前提とする旧土地収用法二九条の適用の余地はないと解すべきである。従つて、都市計画事業による土地収用に旧土地収用法二九条の適用があるとする原告の主張は失当であり、採用できない。

五、残地が崖地同然の土地になつたので、残地補償を求めるとの原告の主張について。

本件収用によつて原告所有地のうち、一、六三一、七六平方メートル(四九三坪六一、別紙図面CDEGHIJKLCの各点を順次直線で結んだ部分)が残地となつたことは当事者間に争いがない。

先ず、本件収用によつて当然に残地に損失(収用損失)が生じたか否かについて判断する。

右争いのない事実、前示第二項で認定した本件土地附近の状況、<証拠>を総合すれば、収用されたのは原告所有地のうち約二四パーセントに当る土地(2,158.63平方メートルのうち527.37平方メートル)にすぎず、本件残地それじたいは一団の土地として適正規模のもので、形状も収用によつて特に不整形になつたとは認められず、使用目的についても従前どおり沼地又は田として使用するについて格別困難を来たさないのみならず、将来において附近の発展と共に商業用地に供用するに差支えのない規模・形状を備えていることが認められる。従つて、本件収用によつて当然に原告に損失(収用損失)が生じたとはいえない。

次に、収用された本件土地に豊中吹田線が建設されたことによつて原告に損失(起業損失)が生じたかどうかについて判断する。

<証拠>によるに、豊中吹田線は本件土地附近では高架道路として建設されたため、本件残地は豊中吹田線と名神高速道路の二つの高架道路の間に挾まれた形となつていること、しかしながら本件残地は二つの高架道路に直接に接しているのではなく、いずれも高架道路の横に設けられている側道と平面で接していること、本件残地の北側に設けられた側道を通つて豊中吹田線(高架)に出入りすることが容易で、吹田市方面及び大阪空港方面への自動車交通が便利になつたこと、本件土地附近は従来から、住宅地としてよりは豊中市南部の国道大阪福地山線沿いの商業適地として大阪市との交通が便利であることに一つの特色があつたこと、従つて豊中吹田線が建設されたことによつて本件残地の価格が低下したことはないことが認められる。他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

よつて、原告の残地補償の主張は採用できない。

六、原告の請求の拡張(請求の追加的併合)について。

原告は請求の拡張(請求の追加的併合)をなし、被告はこれに対して異議を述べた。そこで原告の請求の拡張について検討するに、その主張によれば本件収用にかかる土地の区域が裁定書に示された区域よりも広いので、実測面積において25.14平方メートル(7坪61)の土地が補償なくして被告の本件豊中吹田線事業に使われており、これに対する補償を求めるというのであるから、従前からの原告の請求の当否をめぐつて行なわれた口頭弁論、証拠調の結果が直ちには利用できず、新たに、従前原告が所有していた土地の区域、面積、建設大臣の裁定書に示された土地の区域、面積、起業者が現実に豊中吹田線建設事業に用いている土地の区域、面積及びそれら相互の関係について、口頭弁論と証拠調を重ね、仮に原告主張事実が認められるのであればさらに、損失補償の請求として許されるのか、国家賠償請求とすべきかについてその主張を明らかにすべきであることは容易に予想されるところであり、これがため若干の期間を要するものと認められる。さらに証拠調をするときは相当長い期間を要するものというべきである。

そして、昭和三九年九月一一日本訴が提起されて以来、一五回に及ぶ準備手続がなされて双方が主張並びに立証準備を尽したこと、本件請求拡張の申立書が提出されたのは、判決をなすにほぼ熟した昭和四三年九月二五日の第七回口頭弁論期日であつたことは記録上明らかである。

従つて、本件請求の拡張は、著しく訴訟手続を遅滞せしめるから不当であり、民事訴訟法二三二条一項但書、二三三条によりこれを許さない。(山内敏彦 藤井俊彦 井上正明)

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